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馬場 賢治 元湘南ベルマーレ他
~「平塚の漢」の「ユメノアトサキ 」~
2008年にヴィッセル神⼾に⼊団。トータル7クラブに在籍し、2021年1⽉に⿅児島ユナイテッドF Cにて現役引退を発表。13年間のプロサッカー選⼿を終えセカンドキャリアを迎えられた⾺場賢治さんに、引退後の今に迫りました。
(インタビュー時期/2021年3⽉)
「ちょうど昨日引退して初めてサッカーしたんですよ(笑)」by馬場賢治
現役時代の寡黙で献身的、そしてファンタジスタの雰囲気もまとい一見近寄りがたいオーラの印象とは打って変わり、現役時代の事、そしてこれからの事など、インタビュー形式で対談させていただきました!
早速ですが引退された後に、すぐにされた事はありますか?
⾺場:まずはマクドナルドを罪悪感なく⾷べました(笑)。進路の⾯では、ア スリート向けのデュアルキャリア(複数のキャリアを同時並⾏で⾏う)やセカンドキャリアを⽀援してくれる団体がありまして、そこでビジネスを数ヶ⽉学びました。将来の事をディスカッションしたり、未来を描いたりして、そこ でアパレルブランドの⽴ち上げを明確にすることができました。
そうなんですね!具体的に今はどのような活動をされていますか?
⾺場:2021年7⽉にアパレルブランドを⽴ち上げて発表する予定なので、それに向けて準備をしています。簡単に⾔えば、今は無職ですね(笑)。敢えて次の職業はサッカー界から離れる事にしました。幼少期から洋服がずっと好きで、現役中も時間があれば洋服をよく⾒に⾏っていました。アパレルは⼤変だと⾊んな⽅に聞いていたので、実際にはしないと思っていたのですが。
いつ頃からアパレルブランドの⽴ち上げを考えられていたのですか?
⾺場:今年の1⽉ですね。引退してからある⽅にセカンドキャリアについて「出来る事より、やりたい事にチャレンジしたい」と話すと、「それはやろう!」と後押ししていただいて⾏動に移していきました。それまでは出来る事を紙に書いたりして結構探していましたが、なかなかピンと来るものが無かったのです。もちろん上⼿くいく保証は無いですが、周りの⽅のサポートのおかげで⼀歩踏み出す事が出来、やりたい事が加速的に進んでいきました。
ブランド名も既に決められているのですか?
⾺場:【マインドプラス】というブランド名で考えています。現役時代から“誰かを想う”事を⼤切にしていまして、私が⼿掛けた洋服を着てくださる⽅が、 喜びや楽しみ、ワクワクといった“想い”をプラスしてくれるといいなと思って、その名前にしました。他にもやりたい事はありますが、今⼀番したい事はこのブランドを実現する事です。
そのように“誰かを想う”事が⼤切だと思い始めたのはいつ頃からですか?
⾺場:正直な所、Jリーグに⼊ってプロになりたての頃は「⾃分が試合に出たい」や「⾃分が活躍したい」という気持ちが強くて、今ほどには周囲に気を配れていなかったかも知れません。私は神奈川県平塚市出⾝で、湘南ベルマー レが地元のクラブで2010年から3年間在籍していました。元々私も⼦供の頃はベルマーレのサポーターとしてゴール裏で応援をしていた⼀⼈で、プロになってプレーさせていただく事になり、地元の⽅が⽬の前で応援してくれる姿を⾒て、⾃分の為だけでは無く、より地元に貢献したいという気持ちが強くなりました。地元クラブでプレーする機会をいただいた事によって、よりサポーターの⽅々や周りの⼈の⼤切さを実感させていただいたように思います。
⽀えてくださっている⽅々の想いを背負ってプレーされていたと思いますが、⾺場さんがプロとしてピッチに⽴たれる際に、何か⼤事にされていた事はありましたか?
⾺場:そうですね。例えば後半30分の時点で0対5で負けていたら、勝てる確率はほぼゼロに近いですが、それでも最後まで諦めない気持ちで、⾃分の⼒を100%出し切るようにしていました。サポーターの⽅々はお⾦を払って試合を観に来てくれるので、勝ち負けももちろん重要ですが、「また観に⾏きたい」と思ってもらえるようなプレーをするように意識していました。

そのようにサッカーに情熱を注がれていた⾺場さんですが、 引退後に指導者の道に進もうとはされなかったのですか?
⾺場:そういった選択肢ももちろんありますが、サッカー界に残って本気で監督を⽬指す等の明確な⽬標が無い限り、あまり残るメリットは無いのかなと思っています。仕事が無いから何となく指導者をするなら、サッカー界から⼀歩外へ出てみるのも良いと思います。他の業界の⽅々とお会いできる機会が増え、毎⽇が凄く刺激的で楽しいですしね。サッカー界だけに留まっていては感じられ無かったと思います。
違う業界へ挑戦される事に恐さは無かったですか?
⾺場:それほど恐さは無かったですが、それは家族や周りの⽅の理解があったからだと思いますし、本当に感謝しています。
そんな異業種への挑戦となるアパレルブランドへの挑戦が明確になり、今は事業を通じてどのようなビジョンを描かれていますか?
⼀度業界を離れる事にはなりますが、実は⼀番のビジョンとしてサッ カー界に貢献する事を考えています。貢献するカタチはスポンサーになったり、ウェアを提供したり、あとはオンラインサロンでサポーターの⽅と繋がって⼀緒にサッカー界を盛り上げたりと、やれる事は沢⼭あると思います。⾃分のやりたい事で結果を出して、サッカー界に恩返しがしたいですね。
⾺場さんから⾒て今のサッカー界の課題を挙げるとしたらどんなところがありますか?
⾺場:サッカー界は⾊んな事を取り⼊れようとしているし、私がプロだった13年間の中でも毎年毎年劇的に変わってきたと思います。海外と⽐べるとJリーグは歴史がまだ浅いし、他の魅⼒あるスポーツも出てきている中で、外から⾒ると少しずつサッカーの魅⼒が伝わりづらくなっているのかなと思います。もう⼀度サッカー界の魅⼒は何かを⾒直し、これからは私も⼀⼈のサポーターとしてサッカーの魅⼒を発信していきます!
ファンの⽅がいるという事はその選⼿の魅⼒の数値だと思いますし、⾺場さんのようにセカンドキャリアでもファンの⽅と⼀緒にサッカー界を盛り上げていく事は、サポーターの⽅々にとっても嬉しい事だと思います。現役アスリートの⽅々にとっても今後を考える上で良いモデルになるのではないかと思いますが、その辺りはどのようにお考えですか?
⾺場:そうですね。現役の時は勘違いしがちで、サポーターの⽅々はそのクラブの中のいち選⼿を応援してくれているのですが、引退するとクラブの中ではなく、いち個⼈になるので、一人の⼈間として応援してもらえるかどうかが重要だと思います。私⾃⾝も初めての領域で、⾃分がどれだけやれるのかを向き合っていくためにオンラインサロンを⽴ち上げました。アパレルブランドは先に⽴ち上げている先輩がいて、そういった⽅がいるから勇気ももらいましたし、私もこれからセカンドキャリアを体験するアスリートの良いモデルになれればと思っています!10年、20年過ごした居⼼地の良いサッカー界から違う世界に⾏く事は⼤変だし簡単ではないですが、セカンドキャリアの選択肢が増えるといいなと思います。
振り返ってみて現役時代にこんな事をしていれば良かった、と思う事があれば教えて下さい。
⾺場:Jリーガー専⽤のオンラインサロンがあり、そこで昨年の末にアスリート向けのセカンドキャリア⽀援をされている団体と出会いました。そこでビジネスの勉強が出来たので、もっと早い段階で勉強が出来たら良かったと思います。現役中からいずれ⼤事になるサッカー以外の事を学ぶ機会を作る事、 サッカー界では無い⽅と出会い、⾊んな⼈脈を作ったり⾊んな考え⽅を知る事が⼤切だと今凄く思いますね。それにはチームの理解も必要かと思います。
具体的にはどんな⼈と会ってどんな事を学べば良いと思いますか?
⾺場:どんな⽅であってもサッカー界以外のことが知れるので、誰というよりは⾃分の興味のある分野の⼈に会って、⾊んな情報を得て⾃分のものにしていけると良いと思います!現役の時から⾊んな事にアンテナを張っておけば良かったと思いますし、私もこれからはサッカー界の外から情報提供し、サポーターの一人としてサッカー界に貢献で出来ればと思います!
馬場賢治Baba Kenji
1985年7月7日生まれ。神奈川県平塚市出身。
幼少期は当時のベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)のゴール裏に足繫く通うベルマーレサポーター。その後自身もジュニア、ジュニアユースとベルマーレの下部組織に所属しプレーした。その後桐光学園高校、近畿大学へと進み2008年にヴィッセル神戸へ入団。自身が特別のチームと公言する湘南ベルマーレの在籍も含め、合計13年間で7クラブに在籍し、2020シーズンをもって現役を引退。
